臨床倫理ネットワーク日本

臨床倫理プロジェクト

研究開発活動

臨床倫理プロジェクトが行ってきたこと

臨床倫理は、臨床現場で医療・ケア従事者が、本人(患者・利用者)や家族とコミュニケーションをしながら、医療・ケアを進めていくプロセスにおいて、「どうしたらよいか」「本人・家族にどう対応していくのがよいか」と考える営みです。
「本人にとっての最善を実現すること(家族にとっても過重負担にならないなど、家族への配慮も伴いながら)」を目指し、また「本人・家族を人として尊重しつつコミュニケーションを進めよう」と心掛けるならば、そこでの「どうしたらよいか」という問いとそれに答えようとする検討は、すでに半分は「倫理的に適切」になっています。
とはいえ、後の半分、つまり「この場合、どの道を選ぶことが本人の最善を実現するか」、「どのようにコミュニケーションを進めていくことが、本人(家族)を尊重することであるか」が分からないことが多く、検討を要するのです(臨床倫理のもう一つのポイント「社会的な視点での適切さ」についても同じことが言えます)。臨床倫理事例検討は、個別事例についてこうした検討をする営みです。

 臨床倫理プロジェクトは、臨床倫理事例検討を適切に進める方法の研究・開発から始まったプロジェクトで、当初は「臨床倫理検討システム開発プロジェクト」と称していました。理論的に批判に耐え、臨床実践において実効性のある「臨床倫理の考え方」とそれに基づく「事例検討の進め方」が成果物ですが、1980年代後半から始まり、1999年~2000年に「臨床倫理検討シート」の原型ができ、考え方も事例検討の進め方も改訂を重ね、2018年の改訂によりほぼ安定したものになって、今日にいたっています。
 本研究・開発は、臨床倫理学研究と医療現場における臨床倫理の営みの推進という実践を対にして進める、いわばアクション=リサーチです。
 これまでの主な研究成果は次のとおりです。

  • 臨床倫理の考え方と事例検討の進め方
    臨床倫理の中心課題に関する本プロジェクトの研究成果を臨床現場の実践に向けて提示する際に、これまで「臨床倫理の考え方」と「臨床倫理事例検討の進め方」の二本立てで行ってきました。2000年代初頭にはそれを本プロジェクト刊行の雑誌 『臨床倫理学』 に発表していました。その後、2010年からは「考え方」と「事例検討」を冊子としてまとめるようになり、やがて、 『臨床倫理エッセンシャルズ』 というタイトルの冊子として2011年春版から2016年春版まで、数回刊行しました。これは臨床倫理セミナーの副読本という役割ももつものでした。当初は清水の単著でしたが、だんだんセミナーの講師や協力者の考えも反映させたものとなり、 2016年春版 の著者は「清水+臨床倫理プロジェクト」となっています。
    この間、「考え方」の部分は展開ないし進化はしましたが、特に従来の考え方を捨てるというような変化はありませんでした。これに比して「事例検討の進め方」のほうは、中心となる「臨床倫理検討シート」の様式について2000年以来少しずつ改訂を重ねてきましたが、2016年から2018年にかけて「臨床現場で実際に役立つ」ことを目指す改訂を加えました(といっても事例検討の考え方自体が変わったわけではありません)。
    臨床倫理の考え方と事例検討の進め方について、科研費によるこれまでの研究の成果として2022年1月に刊行した次の書籍が本プロジェクトの現在を示すものとなっています。
    清水哲郎・会田薫子・田代志門 編著『臨床倫理の考え方と実践:医療・ケアチームのための事例検討法』(東京大学出版会、2022年)
    また、臨床倫理(とくに考え方の部分)を含み、「医療現場に臨む哲学」から「臨床死生学」までをカバーする書籍を、やはり科研費の成果として刊行しています。
    清水哲郎『医療・ケア従事者のための哲学・倫理学・死生学』(医学書院, 2022年))

  • 臨床倫理検討シート
    医療現場で臨床倫理の営みを適切に遂行することを支援するツール。シート最新版セット(簡単な使用法付き)がダウンロードできます。
  • 臨床倫理 オンライン・セミナー
    本プロジェクトによる臨床倫理セミナーをオンラインのe-ラーニングや動画にしたコンテンツが並んでいます。

本人・家族の意思決定支援

  • 《本人・家族の意思決定支援》のページ
    臨床倫理の核心は、医療・ケア従事者が本人・家族とのコミュニケーションを通して、どのようにして本人の意向に適い、かつ周囲からみても本人の人生にとって最善だと言える道を見出すかにあります。これは意思決定プロセスを医療・ケア従事者側から見た時に見える景色です。
    では、本人・家族側からはどのように見えるでしょうか。同じ景色を見つめられるように努めながら、本人や家族の側にたってプロセスを適切に進めるように支援することは、臨床倫理の活動範囲です。これは本プロジェクトの特徴ある領域なので、別ページにまとめてあります。

研究成果(論文等)のアーカイブ=オープン・アクセス

本研究プロジェクトの研究の歴史を明らかにする文書等をここに集積するしつつあります。現在、本ページの上の方で紹介した臨床倫理プロジェクトの進化の様子を示す雑誌、冊子を公開しています。



臨床倫理プロジェクト関係研究成果の著作権について

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