人間の行動・振る舞いの方程式 (状況に向かう姿勢)+(状況把握)+(行動・選択)「この方程式を覚えておきましょう」
パート1臨床倫理の基礎

人間の間にある倫理

通常の社会において成り立っている人間関係における倫理について、まず見ておきましょう。医療・介護の従事者は、その仕事を離れた時には、一般市民の一人として周囲の人々と交流しながら、働きかけたり、かけられたりしています。そういう際の倫理です。

倫理とは

倫理は人間関係のあり方についての社会的要請

社会的要請とは=社会の成員間の通念 & 互いに要請し合っている

「互いに要請し合っている」のですから、私も皆に要請しており、皆から要請されています。> そうであれば、私自身も要請に応えて、自発的に自らの自由(自分勝手)を制限することにもなります

他人に「要請する」のであれば、その要請に応じる行為に対しては「是」とし(=賞賛)、応じない行為に対しては「否」とする(=非難)ことが伴います。つまり、このような社会的要請には(倫理的)評価(=非難・賞賛)が伴うのです。

何のため?=社会が平和的に調和を保って存続するため

社会の大多数の成員は、自分たちの社会が平和的に秩序を保って存続していくことを願っています。社会が混乱したり、崩壊したりしては困るのです。そうならないように成員同士の関係を整えておきたいのです。このような目的にために必要なことを「互いに要請し合う」ようになったと考えると倫理の事実が説明できます。

具体的にはどのような社会的要請ですか

「他人に害を及ぼさないようにしよう」(=他者危害禁止)

この要請は、他人の生命や財産に害を及ぼさないということから、迷惑にならないように、相手の選択や行動を支配しようとしないといったことまで含めて理解できます

「互いに助け合いましょう」(=相互扶助奨励)

社会というからには、人間同士が一緒になって共同で生きて行くわけですから、社会として平和を保っていくための協力の要請や、日常生活における「困っている人がいたら、助けましょう」といったことまで含みます。

人間関係に関する社会的要請は他にもいろいろあります。「電車の中では携帯による通話はしないでください」や「新型コロナ感染症の拡大を防ぐためマスクをつけましょう」など、数え上げればきりがありません。しかし、車内での通話を禁じるのは「周囲の人に迷惑にならないため」ですし、「・・・・のためマスクをつけましょう」も「感染による害を防ぎ、拡げないため」で、いずれも他者危害禁止という大きな括りの下に入るものです。このようにして、上に挙げた他者危害禁止と相互扶助奨励は、それぞれ多くのより細かい要請を包括する要請になっています。人間関係に関するこうした包括的な社会的要請を「倫理原則 例えば、キリスト教はいろいろな戒めはすべて「隣り人を愛しなさい」という指令によって包括されるとしています。つまり、隣人愛を倫理原則とする主張だということになります。

人間関係のあり方

倫理は「人間関係のあり方についての社会的要請」です。そこで私たちは人間関係についてどのように考えているかを分析すると、倫理の構造が見えてきます。このことについてより詳しくは、人間の間にある倫理:《皆一緒》と《人それぞれ》 で考えます。

「倫理とは何か」について以上のことをまとめると、次のように言うことができるでしょう。

「倫理」とは 社会が好ましいあり方で存続していくことを目指す、社会の成員同士の関係に関わる社会的要請である

倫理的に適切な行為選択の構造:[状況に向かう姿勢+状況把握⇒行動・選択]

私たちは社会的要請に応じて、自らの行動をコントロールしています。コントロールが適切にできるためには、自らが置かれた状況について把握し、それと社会的要請に応じる姿勢(倫理的姿勢)とが結びつく必要があります。

たとえば、電車の中では携帯電話をかけないという振舞いの選択は、次のような構造をしています。

「他者の害にならないようにする」という振る舞い方は、一般社会における倫理原則の一つとされているものです。これは単に個々の振る舞いではなく、人の内に持続的にあり、「かくかくのことをすると、他者に迷惑がかかる」という事実についての認識ないし予測と連動して活性化するのです。

以上で見た、倫理的姿勢と状況の把握から倫理的な評価を受ける行動ないし選択が生起するという点については、次の次の項目 行動の構造と倫理でさらに詳しく考えます。
公共の場で考えるとわかりやすいな

次の項目では、「倫理」について、「道徳」との異同、「法」や「マナー」との関係を考えます。

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倫理と道徳・法 etc.