臨床倫理検討シートによる事例検討の進め方
パート1 臨床倫理の基礎の「意思決定プロセス」の項で説明したような意思決定プロセスの理解に則った臨床倫理の営みを、医療・介護従事者が実践することを支援するツールとして、臨床倫理検討シートがあります。これは、《情報共有から合意へ》という決定プロセスのコンセプトを具体化できるように、ケア提供者をサポートします。検討の流れは、次のようになっています。
事例提示シート
すべての事例検討について共通の基本情報になります。患者プロフィールとこれまでの経過を書きます。その上で、「分岐点」として、とくに経過の中で岐路になっているところを確認します。
カンファレンス用ワークシート
検討のポイントを洗い出し、今後どうすればよいか考えます。検討の中心となる部分です。
目下の事例について、《医学的・標準的な最善の判断》と、そこから出てくるこれまでの《医療側の対応》についての検討、および《本人の思い》と《家族の思い》について〔事例提示シート〕を参照しながら、検討を深めます。
その上で、両者を総合して《本人の人生にとっての最善》を検討し、必要に応じてその最善を実現するために《家族への配慮》も考えます。ここから今後どのように対応していくかをまとめます。
益と害のアセスメントシート
カンファレンス用ワークシートを使って検討していく中で、複数の選択肢の間の比較検討が必要になった時に使うサポートツールとして用意しました。選択肢の益と害を、誰にとっての益や害であるかに留意しながら比べるようになっています。これにより、思い込みではなく、公平に比較した結果としての最善を考えることができるでしょう。
さらに詳しく知りたい方のために
臨床倫理検討シートのページ http://clinicalethics.ne.jp/cleth-prj/worksheet/をご参照ください。最新版「臨床倫理検討シート」や使い方のマニュアルがダウンロードできます。
以上は、医療者から見た検討プロセスです。このようなプロセスを、本人・家族の視点にたってみて、自分らしい選択ができるように支援するツール《本人・家族の意思決定プロセスノート》がいくつか出ていますので、ケースによっては併用すると、なお理解が深まるでしょう。