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パート1臨床倫理の基礎
意思決定プロセス

生物学的生命と物語られるいのち

生物学的 biological ― 物語り的 biographical

私たちは自分たちのいのちについて、生物学的生命と物語られるいのちという二重の見方をしています。例えば、医療者が治療のために身体に注目して、その状態を診ている時に、医療者は人の「生物学的生命」に注目しています。治療を受ける本人やその家族は、確かに「身体のどこが悪いのだろう?」と生物学的生命に注目してもいるのですが、それは、本人の人生にどう影響するか、今後の人生の計画を変えなければならないかといったことを考えるためです。人生に注目している時に私たちは「物語られるいのち」に注目しています。人生は「これまでこう生きてきた―これからこう生きよう」と物語りながら生きるものだから、「物語られるいのち」なのです。私たちの人生の物語りは互いに重なり合い、浸透し合いつつ、織りなされています。

前ページ図2中で、「生物学的(biological)」「いのちの物語り的(biographical)」とあるのは、治療についての意思決定プロセスの場合です。医療者は生物学的生命に注目して、身体の異常を見出し、エビデンスに基づいて、一般にどういう治療があるかを、その評価と共に本人側に提示します。しかし、治療方針はそれだけで決まるものではなく、本人の人生(物語られるいのち)にとってどうすることが最善かに照らして決まるのです。 私の生活、私の人生として把握されている物語られるいのちにとって不都合であるから、身体の異常は悪いと評価されます。物語られるいのちは、生物学的生命を土台として、その上に成り立っていますが、物語られるいのちは生物学的生命の価値の源です。

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