人間の行動・振る舞いの方程式 (状況に向かう姿勢)+(状況把握)+(行動・選択)「この方程式を覚えておきましょう」
パート1臨床倫理の基礎

社会の仕組みとなったケア(医療・介護)の倫理

さらに詳しく知りたい方のために

益と害のアセスメントに際して使われる考え方は、相応性原則(principle of proportionality)です。これについては、「疾患の悪性度が高ければ、それに応じて強い対応が許される」とか、「治療がもたらす益と害を併せ考え、全体として益かどうかを判定する」などと説明されます。しかし、さらに考えてみると、こうしたことは一つの選択肢を単独で見て、良いとか悪いとか結論できるものではありません。例えば、「治療Aで今の苦痛は緩和される、でも余命は縮まるかもしれない」というだけでは、それを選ぶのが適切かどうかは決まりません。ほかに、苦痛が緩和されて、かつ命も縮めない選択肢があれば、治療Aは不適切だと言われるでしょう。他にそうした選択肢がなく、「余命を縮めないようにすると、苦痛は緩和されない」となった時に、まさに QOL優先か、延命優先かという、益と害についての選択問題となります。 こうして、相応性原則という名の下で、実際にやっていることは、

「現在可能なすべての選択肢のそれぞれについて益と害を枚挙し、選択肢間で比較検討して、どれが一番よいか(あるいは、ましか)を評価する」

というものです。また、達成目標(得たい益)が決まっている時には、このやり方は、

「是非得たい益が得られる選択肢の中で、害が最小のものを選ぶ」

というやり方だと言い換えることができます。

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社会的適切性原則