人間の行動・振る舞いの方程式 (状況に向かう姿勢)+(状況把握)+(行動・選択)「この方程式を覚えておきましょう」
パート1臨床倫理の基礎

社会の仕組みとなったケア(医療・介護)の倫理

臨床の倫理原則(2) 相手の益になるように

与益 (beneficence)原則と呼ばれます。できるだけ益になるように、害にならないようにと、患者さんの最善を目指すことは、医療者にとって当然の姿勢です。しかし、多くの治療方針には益が見込まれるだけでなく害も伴います(例えば副作用)。そこでいろいろな方針の候補の中でどれを選ぶかを検討する際には「益と害のアセスメント」により、どれがベストか(ましか)を考えます。
*beneficenceは「恩恵」「善行」などと訳されていますが、生命倫理の文脈では誤訳というべきです。宗教的な文脈ではそういう意味になることもありますが、ここではbenefit(益/益になる/益をえる)の類語として、「益になるようにすること」という明確な意味で使われています。

決定プロセスでは患者側への説明に際して、このアセスメントを丁寧に提示する必要があります。医療者は医学的観点での益に注目し、奨めたい治療がある時には益ばかり強調して、副作用やリスクについてはともすると曖昧にする傾向がありますが、生活全体を視野にいれた益と害を、患者側の感覚で分るように提示する必要があります。 どれが最善か(ましか)の評価について関係者の間で意見が分かれることもあるでしょう。その時はコミュニケーションを通して意見の一致を目指すのですが、どうしても一致しないこともがあります。医療・介護を提供する側と受ける側との間で、価値観や世界観が異なっているために評価が一致しない場合、それを解消することは難しいです。一致を目指すということは、同の倫理による問題解決をしようとしているのですが、これが無理だとなった時、相手と自分が異なっていることを認めて、異の倫理に則った問題解決に移行します。つまり、本人の価値観・世界観に基づいて最善と評価される選択肢を、医療・介護側も許容するのです。ただし、その選択肢が、社会的視点から見てまずいという場合は別ですが。

P2:益になるように/害にならないように

益(メリット)+害(デメリット)の評価が必要 医療・ケア活動の多くには益も害・リスクもある。全体としてどう評価するか?

がんの化学療法

本人の視点で益と害のバランスが良いものを選ぶ

候補となる選択肢のアセスメントと比較

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社会的適切性原則