高齢者ケアと人工栄養を考える_第4刷
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意思決定プロセスノート(記入例2)1 ご本人について・本人はどういう方ですか(以前の職業など)今はどのように暮らしていますか小学校教員を40年間務め、退職後は民生委員として熱心に地域活動した。長男家族と同居していたが、アルツハイマー型認知症になり、3年前に療養病床に入院。長男(中学校教員)とその妻と子どもらは、月に1回程度、見舞いに行く。長女は夫の仕事のため海外在住。次女は隣県在住で、見舞いにはあまり来ることができないが、長男宅によく電話をかけてくる。次男からは、連絡はほとんどない。・社会資源の利用状況/医療・介護等関係者意思決定プロセスの主たる参加者:長男とその家族、次女、医療スタッフ記入者本人  その他(           長男            )・これまでの経過 10年前にアルツハイマー型認知症と診断された。今では認知症は高度に進行し、意思疎通はできない。身体活動も著しく低下し、寝たきり全介助で、介助で着座しても座位を保持することが困難になってきた。担当医は、これは専門用語ではFAST stageの7(d)の状態だと言っている。これまで、言語聴覚士による嚥下リハビリや、ソフト食などの食べやすい工夫と食事介助を受け、なんとか口で食事をとってきた。食べてもらうことに関する努力は最大限してもらった。しかし、最近、むせや食べ物をのどにつまらせることが多くなってきていたと聞いている。この1年で誤嚥性肺炎を2回起こし、先週も誤嚥性肺炎を起こした。今は末梢点滴を受けている。担当医は、肺炎が軽快したら経口摂取を再開するのは不可能とまでは言えないが誤嚥のリスクがとても高く、もしそれでまた肺炎を起こすと、今度は生命に危険があるといって、人工的に水分と栄養を補給する方法について説明した。母は元気だったころ、経管栄養などでチューブだらけになるのは嫌だと何度か言っていたと記憶している。それを医師と看護師にも話してみたが、本人の書面の事前指示はなく、話し言葉通りにしてよいかどうか、悩みどころである。妹も、母の「チューブは嫌」という発言は記憶しているが、そうはいっても、経口摂取に危険があり、かつ、経口摂取だけでは栄養分が不足するときに、人工的に水分と栄養を補給しないことには、かなりの抵抗感を示しており、「見殺しにするみたいで嫌だし、親戚やご近所の手前、何もしないわけにはいかない」と言っている。誤嚥を覚悟で経口摂取を再開するか、人工的な水分・栄養補給に切り替えるか、その場合にどの方法をとるか、再度、医師・看護師と私らと妹で話し合うことになった。いつまでに決めたいですか現在は点滴。今後の方針はできるだけ早く決める。・お名前 秋田小町性別・年齢 89歳 女性・家族構成 夫は10年前に他界。息子2人、娘も2人。66

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