高齢者ケアと人工栄養を考える_第4刷
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● 本人の人生観・死生観による考えかもしれません。口から食べられなくなったことを老化の現れと見て、「人間、食べられなくなったら、それでおしまい」と考えることがあります。ご本人のこれまでの生き方や人生観を考えて、このように考えることが「ご本人らしい」と言える場合、ご本人のお考えに周囲の者が納得することがあり得ます。この場合は、〔快適な日々〕を目的とすることになります。● もっと衰えた時のことを考えて、これを選ぶことをためらっている場合もあります。当面〔人生の延長+快適な日々〕を目指すのは良いけれど、その先に、衰えが進んだときは、人生を延ばそうとすることがかえって辛くなるとご心配ですね。でも、この点はご心配には及びません。ご本人の状況が変われば、〔快適な日々〕だけを目指すという選択をし直すこともできます。「人工的な栄養補給は、始めたらやめられないのでは?」とご心配されるのはごもっともなことです。最近まで、多くの医療従事者もそのように思っていました。しかし、関係者たちの話し合いを通して、今後は人工的な栄養等の補給をしないことが本人の人生にとって最善であるという結論になった場合、そうした補給を中止しても法的問題にはなりません。ご本人にとってそれぞれの時点での最善の道を選ぶことができないなどということはないのです(ご心配でしたら、担当の医師や看護師に確認してみましょう)。● 「家族に負担をかけたくない」とお考えでしょうか。ご本人は家族のことを考えて、「迷惑をかけたくない」「家族に負担をかけたら可哀そうだ」という理由で、栄養補給をすればまだまだよい人生が続くのに、それを選ぼうとしないことが時にあります。でも、ご家族はどう思っておられるでしょうか。できるだけのお世話はしたいと思っておられるのではないでしょうか。また、家族に重過ぎる負担をかけないで済むように、いろいろな社会資源が用意されています。介護保険を使ったケアプランなど、このような計画でやれば、本人も自分らしい生活ができ、家族も大丈夫だというようなやり方を具体的に考えましょう。例えばケアマネジャーと相談しながら、これから先、要介護度が進んだ場合、例えば年金の範囲でどれほどのことができるか、プランを仮に立ててみるなどして、家族に全く負担をかけないのではなく、過重な負担をかけない方法があることを確認してみてはいかがでしょうか。48

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