高齢者ケアと人工栄養を考える_第4刷
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選んだ目的を実現するために● 人工的水分・栄養補給法をどうするかを決めて、それを実施し始めたとして、それですべて終わったわけではありません。選んだ目的〔人生の延長+快適な日々〕も〔快適な日々だけ〕も、水分・栄養補給をどうするかを決めて、実行すれば達成できるというものではありません。《快適さ》を実現するには、ご本人が苦痛なく過ごせるように、見守り、時には医学的な対応をしなければならないことがあります。加えて、本人に残っている力に応じて、それを発揮できるような環境にして、本人が生きててよかったと思える日々になるようにケアしていってこそ、水分・栄養補給についての手当が活かされるのです。● どの選択の場合でも、ご本人の状況に応じて「可能な限りの経口摂取」を心がけましょう。「胃ろうにしたので、十分な水分・栄養を胃に直接入れられる」といって、経口摂取が少しはできるのに、しなければ、残っている力が発揮できる環境を提供したことにならず、本人の楽しみを奪ってしまうことになります。● 口から食べられない場合でも、氷のかけらを口に含むくらいはできることが多いようです(リスクもありますから、担当の医師や看護師と相談してみてください)。氷のかけらを作って、ご本人の口に含んでいただくと、口の渇きを和らげ、また、味がついていればそれを楽しむことができます。ご家族としても、それをすることで、ご本人との交流になり、「できることをしている」という気持ちになる方が多いようです。● どのような選択をしたにせよ、本人の《快適な日々》を目指すには違いないのです。経口摂取といったことに限らず、本人の「快適」のためにやれることはたくさんあります。例えば、口腔ケアで口腔内の清潔や潤いを保つ、入浴で皮膚の清潔や爽快感を提供する、車椅子などで散歩し外の風を感じる、などなど。 選んだ後のケアの進め方42

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