高齢者ケアと人工栄養を考える_第4刷
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末梢静脈栄養法(末梢点滴) 水分や栄養液を手足の静脈に入れるやり方で、PPN(peripheral parenteral nutrition)とも呼ばれています。 手技は容易ですが、末梢静脈は中心静脈に比べて血管が細く、流れる血液量も少ないため、栄養液の浸透圧の高さやカリウムの量によって、静脈炎や血管痛が起こりやすく、血栓が生じて静脈が塞がってしまうこともあります。 また、末梢静脈からは十分な栄養補給は困難です。どういう場合にどのように有益か□❶手技は容易です。□❷必要な水分と、十分ではありませんが多少の栄養分を確保できます。益にならない場合/害になる場合□❶必要な水分は補給できますが、生命維持に必要な栄養は補給しきれません。ですから、   栄養補給の手立てがこれだけである場合、長く生命を維持することはできません。□❷毎日、長時間、点滴の管につながれて動きを束縛され、不自由な思いをします。□❸理解力が衰えている場合、抜管(点滴の管を体から抜いてしまうこと)を繰り返  すおそれがあります。□❹高齢者や痩せている人の場合は特に、末梢静脈のラインを確保すること(末梢静  脈に体外から針を刺して、液を注入する入口をつくること)が難しく、何度も穿  刺し、本人に苦痛を与えることがあります。□❺新陳代謝の機能が低下して、注入された水分を代謝しきれない場合、余剰分が体内にた  まり、むくみの原因となり、身体に負担をかけます。したがって、身体が衰えてきて代  謝機能が減退していて、回復の見込みがない場合、注入量をごく少量に絞る、また、注  入しない・注入を終了するほうが、本人にとっては益になることがあります。2-215

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