高齢者ケアと人工栄養を考える_第4刷
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 腸を使わずに、静脈などに、直接、水分・栄養分を投与する方法です。腸の機能が衰えている時でも、血液中に直接、水分・栄養分を入れることができますから、身体の代謝機能が維持されている場合には、生命活動の維持につながります。静脈に注入する方法は、中心静脈栄養法と、末梢点滴(末梢静脈栄養法)に分けられます。また、この他に皮下注射という注入法もあります。中心静脈栄養法 糖質、アミノ酸、脂肪、ビタミンおよび微量元素を含んだ栄養液を中心静脈内に直接投与する方法で、カテーテルを心臓近くの中心静脈まで入れて行います。TPN(total parenteral nutrition)とも呼ばれています。従来はIVH(intravenous hyperalimentation)と呼ばれていました。 1日の必要熱量を得るための栄養素を1日必要量の水分に溶解すると高浸透圧になるので、血中で速やかに希釈されるように、血流量の多い中心静脈に注入します。高カロリーの高浸透圧液やカリウムが多い液も、中心静脈内ですぐに薄められ、副作用少なく輸液できます。 中心静脈栄養法では、カテーテルを鎖骨下静脈か内頚静脈または大腿静脈に入れます。従来、その管理は病院内でのみ可能でしたので、入院が必要でした。しかし、現在は、CVポート(リザーバー)と呼ばれる、皮下埋め込み型の小型の医療器材を使用して栄養投与することも可能です。CVポートは直径約2cmの円盤状のタンクで、前胸部か上腕部に埋め込みます。埋め込みには小手術が必要ですが、CVポートがあれば、1回で確実に針を刺すことができ、針を何度も指し直す場合に比べて苦痛が少なくなります。また、適切に管理すれば感染リスクも低くなります。在宅療養も入浴も可能です。ただ、埋め込み術に伴う合併症のリスクはあります。2-1 中心静脈栄養法はもともと手術後の栄養補給に使用されていました。これによって大手術ができるようになり、広く使用されるようになりました。そのようなわけで、おもに一時的栄養補給として行われるものであり、栄養状態が改善されればもとの生活に戻ることを前提に行われるもので、回復する見込みのない終末期の患者さんに長く続けるものではないとされています。非経腸栄養法(ひけいちょうえいようほう)213

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