高齢者ケアと人工栄養を考える_第4刷
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 経腸栄養法は管(チューブ)を通して流動食を消化管(胃ないし腸)に直接入れる方法なので、「経管(けいかん)栄養法(えいようほう)」とも呼ばれています。胃(ないし腸)に入れられた栄養や水分は腸から体内に吸収されますから、胃や腸の本来の働きを介した自然な栄養法です。管を使って腸に水分・栄養を送り込む主なやり方は3通りあります(12頁以下で説明します)。どういう場合にどのように有益か 経腸栄養法は、□❶次の二点が保たれている場合には栄養状態を保ち生命を維持し、また身体の状態  をよく保つのに役立ちます。  ①腸から水分・栄養を体内に吸収できる  ②吸収した水分・栄養を消化吸収し、身体の活動のために消費できる□❷この場合には、静脈に直接、栄養分を投与する方法と比べて、身体が保っている  機能を活かして使っているので、自然で、害(副作用)が少ないです。□❸腸は免疫機能に重要な役割を担っているので、腸が活動することにより、身体の  免疫機能の維持に役立ちます。益にならない場合/害になる場合□❶次の二点のどちらかが欠けている場合、つまり  ①消化管に食物を入れても十分消化できない、または、  ②消化はできても、もう身体全体の新陳代謝が減退しているので、 体内にとり    こんだ水分・養分を有効に使えない このような場合には、経腸栄養法は、本人に益をもたらさないばかりか、余計な負 担をかけ、有害な結果をもたらします(心臓に負担をかける/身体がむくむなど)。□❷経腸栄養法により、生命維持(=延命)ができても、それによって延びた本人の   人生(いのちの物語り)が、本人にとって本当に益となるかどうかが疑わしい場  合は、これを選択するかどうかは、慎重に考えるべきことになります。経腸栄養法(けいちょうえいようほう)18

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