心積りノート 考え方・書き方編
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3-3 快適さを目指すケア本冊子P12~13で説明しましたが、医療が目指すことは、①生命を長く保つことと、②日々快適に過ごせることの2つからなっています。昔から「元気で長生きがいい」と一般市民の希望が語られてきましたが、長生きと元気とはちょうど①と②に対応します。また、②がいうところの「快適」は、「辛くなく過ごせる」ことだけでなく、「自分が持っている能力(残っている力)を発揮する機会がある」ことも含んでいます。治療といわれるものは、大体が①と②の両方を目指すものなのですが、中には②つまり快適だけを目指すものもあります。緩和ケアはまさにそのような対応なのです。[緩和ケア]緩和ケアは、疾患にかかり身体的健康が損なわれることに由来して生じる、辛いと感じられる身体的な諸症状(痛み、はきけ、けだるさ等々)を始めとして、健康が損なわれることによる心理的な辛さ、社会において自分が占める位置や人間関係に関わる辛さ、そして、今の自分には生きている意味がないといった人間存在の根本に関わるような辛さにも対応して、いろいろなアプローチで、患者さん本人およびそのご家族の快適さを保ち、あるいは回復しようとします。身体症状に対しては医学的な働きかけが中心になります。心理的な辛さも一部は向精神薬などの医学的対応ができるところもあるでしょう。しかし、それ以外は、医学以外の働きかけが中心になります。緩和ケアは、昔は死が近くなった人生の最終段階でなされるものと理解されてきましたが、今では、疾患が見つかった時から最期まで、いつでも必要に応じてなされるものだと理解されるようになっています。そこで、本冊子P50にある「記入編 記入例」の図中の「3-3 快適さを目指すケア(緩和ケア)」では、客観的・医学的には、全期間にわたって必要に応じて受けることをおすすめしているわけです(この図で全体が緑になっているのはこういう意味です)。皆さんにこれを確認し、点線を全部実線にしていただくことを期待していますが、もちろん、個人的なお考えがあって、点線のままで残ることがあるかもしれません。また、これと関連して、医療側から緩和ケアを受けることをすすめられた時に、「もうすぐ死ぬのだ」とか「そんな私がすぐ死ぬと宣言するようなことは言わないでください、まだ緩和ケアなんて早いです」と思わないでください。そうとは限らないからです。ただし、現行の制度では、緩和ケア病棟(PCU)に入るという場合は、死が近づいているということでもある場合が多いでしょう。一時的に入院して症状コントロールがうまく行ったら退院して自宅等で過ごすというようなPCUの使い方がされることもあるでしょうが、PCUの制度が始まった時期は、「緩和ケアは終末期になされるもの」という定義がされていましたので、そのような使い方が現在48

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