心積りノート 考え方・書き方編
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できるだけのことはしてください?Column[コラム]医療の場で、時々患者本人あるいはむしろそのご家族が、医師に向かって「できるだけのことをしてください」とお願いするということがしばしば見られます。 患者さんご本人に重篤な疾患があることが分かって、積極的な治療を考える場面で語られることもあるでしょう。が、積極的な治療はもう効果的でなくなった、死が近いことが予感されるような状況で、よく聞かれます。この場合は、「できるだけのことはしてください」になるでしょう。もう回復は望めません。死を避けられないのが事実かもしれません。でも、少しでも長持ちさせて、本人の日々が延びるように、家族が一緒にいられるように、「できるだけのことはしてください」と訴えるのです。本人はもう意思表示ができない状況になっていて、家族が医師に向ってこう訴える場面が多いでしょう。「できるだけのこと」というと、(a) 現在の医学の知識・技術を使って可能なこと・効果がありそうなことはすべてやってくださいという意味でしょうね。 こういう場合の「効果」は、「生命を延ばす効果」であることがほとんどです。でも、それが本人の人生にどう益になるのかを考えてみましょう。治療には益もありますが、害も伴います。ですから、(b) 現在の医学の知識・技術を使って可能なこと・効果がありそうなことのうち、本人の人生をより良くする見込みがあることをやってくださいあるいは、 本人の人生にとって益になることなら、できるだけやってくださいと言ってはいかがでしょうか。医療側は「できるだけのことは」と言われると、(a)の意味で理解しますので、ご家族の気持ちに応えて、本人の人生にとって益になるとはいえないことでも、生命を延ばす見込みが少しでもあれば、やろうとする傾向があります。ですから、(b)のようなご希望であるならば、ご本人・ご家族側で何を希望しているかを誤解されないように伝える必要があります。このことは、心身の老人力が発達するにしたがって、積極的治療や生命維持についての私たちの意向が変わるということにも大いに連関します。☆「できるだけのことはして欲しい」と同様の思いは、次のような発言となることがあります。46

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