公的医療保険制度をめぐる論点
筑波大学社会工学系
吉田あつし

高齢化社会の到来による国民医療費の増加を契機として、現在の公的医療保険システムを維持すべきかどうか、それとも民間医療保険を主体にしたアメリカ型の医療保険システムを取り入れるべきか、が社会経済政策に関する重要な論点の一つになっている。現行制度は、医療専門家の「専門家としての倫理」(Professional norms)と医療専門家組織 (Professional association)の内部自治に過度に依存して設計されている。しかし、医師が「経済的動機」(Economic motives)に支配されて診療内容を決定しているならば、アメリカのような制度が合理的である。この報告では、これまで報告者が行ってきた、被保険者のモラル・ハザード及び医師の代理者機能 (Physician agency)に関する実証研究について報告する。さらに、現在進行中の医師の労働市場分析および病院・診療所の産業組織と独占禁止政策について基本的な考え方を報告する。

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