精神医療における自己決定の問題
尾久裕紀(北青山診療所)

精神医療においても公共の福祉に反せず、他人の権利を侵害せず、判断能力があれば、患者の自己決定を尊重しなければならない。
患者の自己決定の制限が正当化されるのは、①いわゆる「自傷、他害」の恐れがある場合、②医療、保護が必要であり、かつ判断能力が欠如している場合に限られる。
その際、前者では公権力により、後者では家族などが代理決定を行う。
しかし、医療、保護が必要であるが、判断能力がある場合には、患者の自己決定が尊重され、必要な治療を受けることなく、結果的に社会的不利益を蒙ることがある。
このような場合、やはり自己決定を尊重し、医療が必要な患者を放置すべきか、パタ-ナリスティックと非難されても医療に結びつけるべきか、について若干の検討をしたい。
このような場合、第三者機関の介入、適切な医療を受けるためのカウンセリングなどがシステムとして用意されることが、精神医療の質を高めることになる。

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