病院内における医療紛争・倫理問題解決のためのモデル開発と技法
科学技術文明研究所特別研究員 稲葉一人
病院内には、医療事故や誤解を原因とした医療者・受益者(患者・家族)間でのトラブル・紛争が生じ、また、医療者間でのトラブルが多く潜在化しています。2003年4月から、特定機能病院には、患者苦情相談窓口が設置され、患者の不満を受けとめるシステムが置かれようとしていますが、英国等の経験を踏まえると、システムと同時に、誰が、どのようなスキルで患者の不満を受けとめるかという問題の充実こそが、急務といえます。また、苦情相談を受けるということでは解決しない問題(事故を巡る紛争)について、どのように解決していくのかについての展望も十分にあるわけではありません。
そこで、研究者は、米国における院内での紛争解決のシステム・モデル(これと、ADRと呼びます)に倣い、より、わが国の臨床に即した院内紛争解決モデルを検討すると同時に、モデルを運営する人のトレーニングについて、米国での知見、特に、Mediationという技法をもとに、開発を考えています。更に、紛争だけではなく、医療倫理的な問題解決・意思決定における、調整的手法の開発もねらいに置きたいと考えています。
参考文献等
- 稲葉一人、医療・看護過誤と訴訟、メディカ出版、2003年3月
- 稲葉一人、調停技法トレーニングと調停の可能性、市民と法、2002年12月
- 稲葉一人、医療事故の予防と紛争解決のための新しいシステム・看護管理12巻3号・医学書院・2002年3月
- 稲葉一人、長尾典子、機能する病院内臨床倫理委員会 看護管理 医学書院 2003年4月
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