高齢者終末期における意思決定の諸問題
砺波サンシャイン病院 佐藤伸彦
超高齢化社会をむかえる中で、医療現場は少しずつその様相が変化してきている。当院は100床の療養型病床であるが、その平均年齢は83歳、平均要介護度は4.1であり年々高齢化、重症化している。その多くの方が一般病院での急性期を経て、後遺症・合併症を抱えながら家族に連れられて転院して来られる。しかも、脳血管障害後遺症やアルツハイマー型痴呆症で意思の疎通が出来ないと思われる方が7割から8割を占める。自分自身では目の前の風景を変える事の出来ない寝たきりの、家に帰ることも施設に移ることも出来ない高齢者が増えている。当院での取り組みの中から、高齢者の終末期に関する、特に治療方針などの意思決定に関する諸問題を提起し今後の新しい取り組みについても考えてみたい。
症例98歳女性、脳梗塞後遺症で右完全片麻痺、失語症、脳血管障害性痴呆症で意思の疎通できず。食事は半介助、移乗・移動は全介助、排泄はオムツ。次第に食事をむせる様になり食事量が減少してきた。時々熱を出す。その後口からまったく食事をとらずに日中臥床傾向になる。
- 高齢者の「終末期」とはいつからか。-癌のターミナルとの相違-
高齢者終末期=エンド・オブ・ライフ・ステージ(End of life stage)
- 医療方針は誰が決めるのか。
- 必要最低限の事とはなにか。-「通常」と「通常以上」の違い-
特に人工栄養と水分補給の問題
- 高齢者のQOLの意義 -QOLと生存時間の積-
- 病院で最期を迎えることが本当にいいのか
- 終末期は「点」や「線」ではなく、「多面体」として捉える
- 医療・看護・介護の方針にマニュアルはない。個々の症例で異なる。重要なことは
- 徹底した話し合い(スタッフ間、医療側と家族)
- 相互理解(終末期は家族にとっては初めて通る道である)
- 治療方針は変更可能な柔軟性を持たせる(ドタキャンを許す余裕)
- 人工栄養・水分補給は絶対的に必要・不必要と決められるべき問題ではない。必要な通常の行為である時もあれば、必要のない通常以上の行為である時もある。
- 在宅医療の充実
- ホスピホームの可能性(病院でも、施設でも在宅でもない新しい形の模索)
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