神経難病患者さんの在宅医療と終末期医療
2004年1月12日
『医療システムと倫理』研究集会
神経内科クリニックなんば 難波玲子

【はじめに】
筋萎縮性側索硬化症を代表とする神経難病の多くは進行性で治療法がなく、ADLが低下し介助が必要となり、構音障害のためにコミュニケーションが困難となり、嚥下障害のために経管栄養が必要となるなど介護度が非常に高くなります。さらに生命に関わる問題として呼吸障害があり、気管切開や人工呼吸器装着を選択するかどうかが問題となることが多く、病気を理解したうえでいかに生きそして死ぬかということも非常に大きな問題です。これらの患者さん・ご家族が病気とともに少しでもよりよく生活するために必要なこと、進行に応じた問題点と対処法、終末期の医療についての経験を話し、問題点を提起したい。

【神経難病患者さんの在宅医療継続のために】
進行に伴い通院が困難となり治療法もないことから、専門医療機関から離れ不安なまま過ごしたり、病態把握がなされないまま経過し適切な対応が遅れることも少なくありません。従って、在宅療養中の進行に応じた病態の把握と対処が重要となり、それらについてまず述べます。

  1. 症状を理解・把握すること:運動障害、コミュニケーション障害、嚥下障害、呼吸障害、合併症や二次的問題
  2. 症状に応じたケアや環境整備
  3. 医療者間、医療福祉の連携

【QOLの問題】
介護度が増していくなかでQOLをいかに維持するか、各種医療処置を選択するかどうかの問題も重要であり、そのためには以下のことを考慮する必要があるでしょう。

  1. 病気の受容の問題:告知の重要性
  2. 生きがい・楽しみ

【終末期医療の問題】
人工呼吸器や気管切開などの延命処置を選択するかどうかは、患者さんが病気をよく理解したうえで自己の状況・人生観に基づいて自己決定することが望ましい。そして、選択した場合は、その後の人生をいかに生きるかということが問題となります。しかし選択しない場合は、終末期の苦痛をいかに軽減するかを考えることが重要となります。神経難病における終末期医療のあり方は日本では議論が緒に就いたばかりで、今後、当事者・関係者はもちろん皆で考え深めていくことが必要でと思います。

今回は筋萎縮性側索硬化症の終末期ケアを中心に、以下について話します。

  1. ガイドラインの紹介
  2. 症例の紹介
  3. 人工呼吸器中止の問題
  4. 問題点:制度上の問題、意識の問題
  5. 在宅ホスピスの可能性は?
  6. 遺族のケアの問題

今までの経験を踏まえて以上について述べます。神経難病医療の深化と向上に資する意見交換ができることを期待しています。

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